第九十四話『今、自分がここにいるということ』-【横浜篇】俳優 松田優作-

第九十四話『今、自分がここにいるということ』-【横浜篇】俳優 松田優作-



今から28年前に、40歳でこの世を去った俳優、松田優作。

彼には、横浜という街が似合っていました。

横浜が舞台の連続ドラマ『俺たちの勲章』。

黒い皮ジャン、黒い皮パンに身を包み、サングラスをかけて埠頭を歩く姿は、今も鮮烈に印象に残っています。

セリフがなくとも、そこに立っているだけで圧倒的な存在感を醸し出していました。

主演した映画、その名も『ヨコハマBJブルース』。

松田優作扮するBJは、横浜の場末のバーで歌うブルースシンガー、そして私立探偵でした。

黒のロングコートにグレーのマフラーを巻いたファッションも、多くのファンに真似されました。

この映画の原案は、松田優作本人。

横浜に思い入れがあったのでしょうか。

彼が生まれ育った街もまた、港町でした。

山口県下関市。

しかし、18歳で街を出てから、松田優作は二度と下関に暮らすことはありませんでした。

彼にとって、あまりいい思い出がなかった街でしたが、一軒だけ、日活の映画館がありました。

時は、日活アクション映画の全盛期。

石原裕次郎、小林旭、宍戸錠。

幼い優作にとって、スクリーンの世界に我が身をゆだねる時間だけが、生き生きと輝くひとときだったのかもしれません。

彼が幼少期を過ごしたころは、下関にまだ遊郭がありました。

下関の港にやってくる漁船の漁師を相手に、街に娼婦が立っていました。

彼は幼心にいつも、こう思っていたと言います。

「ここは、俺のいる場所ではない」。

父親の顔を知らないということ、国籍が日本ではないということ、そうした環境も、彼を孤独に追い詰めていきました。

自分の居場所を探す旅は、終生、続いたのでしょう。

でも彼は、ただ探すだけではなく、自分の存在を強く光らせることに、文字通り、命を賭けました。

壮絶な人生を歩んだ俳優、松田優作が、格闘の末につかんだ明日へのyes!とは?

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