映画『秋刀魚の味』は、1962年に公開された小津安二郎監督の遺作です。
妻に先立たれ、娘・路子と暮らす会社員の平山周平。娘の結婚を周囲から勧められても、これまで深く考えていなかった周平でした。
しかし、かつての恩師と、その娘・伴子の姿を目にしたことをきっかけに、周平は娘の将来を真剣に考えるようになります。
娘を嫁に出す父親の喜びと寂しさ。
そして、子どもが巣立った後に残される「老い」と「孤独」。
一見すると、娘の結婚をめぐる何気ない家族の物語ですが、その中には戦後の日本社会の変化や、親子の距離、人が年齢を重ねていくことの哀しさが静かに描かれています。
笠智衆、岩下志麻、佐田啓二、岡田茉莉子、杉村春子、東野英治郎ら、豪華キャストの演技も見どころ。
『晩春』など、小津作品で繰り返し描かれてきた「父と娘」の物語を、より人生の哀愁と孤独を深く掘り下げて描いた作品です。
小津安二郎が60歳で亡くなる前年に完成させた、まさに最後の作品。
113分という静かな時間の中に、人生の「幸せ」と「寂しさ」が同居する、小津映画の集大成ともいえる一本です。
【作品情報】
監督・脚本:小津安二郎
脚本:野田高梧
出演:笠智衆、岩下志麻、佐田啓二、岡田茉莉子、杉村春子、東野英治郎ほか
公開:1962年11月18日
上映時間:113分
製作・配給:松竹
©1962 松竹株式会社